ラッセル=アインシュタイン宣言65周年を迎えて
日本パグウォッシュ会議
2020年7月9日
1955年7月9日、英国ロンドンで発表された「ラッセル=アインシュタイン宣言」は、65年後の今、その意義を改めて認識すべき状況を迎えている。同宣言は、水爆の登場による人類の危機、そして戦争と核兵器の廃絶を人類に訴えたものだが、今なおその重要な意義は消えていない。この宣言を契機に、東西の科学者がカナダのパグウォッシュ村に集結して開かれた会議が、「パグウォッシュ会議」の発足につながったのである。
実は、この宣言のきっかけとなったのは、1954年3月に起きた第五福竜丸事件である。被害の実態についての日本の科学者の分析を紹介した西脇安教授の講演を聞いたジョセフ・ロートブラット博士は水爆の危険性を世界に訴えようと尽力し、その活動がラッセル卿を動かした。そして宣言に署名した湯川秀樹博士を含む3名の日本人科学者が最初のパグウォッシュ会議に参加し、日本でのパグウォッシュ運動にも尽力することになる。――日本パグウォッシュ会議にとっても、ラッセル・アインシュタイン宣言は特別な意味を持つ。
65年後の今、核兵器廃絶という課題は残念ながらまだ実現していない。冷戦後、核使用のリスクがもっとも高まっているといわれる状況でもある。しかし、経済的・政治・文化等すべての面で世界の一体化が急速に進むと共に、さまざまな危機が噴出し、世界中の市民が命・平和・環境を守るため団結していく必要性を痛感しつつある現在、「人間性」の立場から核兵器廃絶を人類全体に訴えた「ラッセル=アインシュタイン宣言」は、説得力と輝きを増しているのではないか。――「宣言」の結びにある、最も有名な次の言葉を、あらためてすべての人が心に刻んでほしい。世界が大きな変革の時期を迎えつつある今こそ、この言葉の意味を人類全体がもう一度思い起こすべき時が来ている。
「Remember your humanity, and forget the rest」(人間性を心にとどめよ、そして他のすべてを忘れよ)
日本パグウォッシュ会議代表 鈴木達治郎
同副代表 高原孝生
同副代表 栗田禎子