原爆投下75 周年に際して
パグウオッシュ会議事務総長のメッセージ
75年前の 8 月 6 日、 9 日、広島と長崎に投下された 原爆は 17 万人( 原文どおり。 訳注:広島で 14 万、長崎で 7 万、合計 21 万人と推定されている)の命を奪い、核兵器の存在自体が人類の脅威となることを 明らかにし た。 「 ラッセル=アインシュタイン宣言 」 に触発されて 発足したパグウォッシュ会議は 、核兵器の危険性 に 警告 を発することを主な 目的とする 科学者 の集まりであり、今もその訴えを続けている。
広島・ 長崎 以降 、核兵器は都市に対しては使用されていない。地上及び大気中の核実験は1963 年から実施されていない。 核不拡散条約( NPT や 米ロ 2国間 で結ばれた さまざまな 軍備管理 条約を 含む世界的な 核 兵器 規制 システム は、核兵器を保有する国の数を抑え、世界の核弾頭数を 1980 年代半ばの 7 万発から大きく減少させてきた。
しかし、依然世界には9 か国(米、ロシア、中国、フランス、英国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮)の核保有国が存在 している。世界の核弾頭数は今でも約 1 万3千~4千発程度存在している。核実験禁止条約はまだ発効しておらず、核兵器の使用は、核保有国の戦略に含まれたままだ。 唯一 中国 、またそれに加えて現時点では インド だけが、 核 兵器先制 不使用の 政策を とっている 。他の核保有 諸 国では 、 通常兵器における劣勢を補う ために 核兵器 を 用いることさえ検討 されて いる。米ロ2国間 の 軍備管理システムは、現在 危機的 状態を迎えている。米ロ間 でまだ有効な 最後の核管理条約が 2021 年2月に期限を迎えるからだ。新たな核兵器運搬システム(例:極超音速ミサイル)がすでに配備段階にはいっているのだ。
非核兵器地帯(NWFZ については、 いくらか進展が見られる とはいえ、最も重要な中東と北東アジア での NWFZ 構想 は前進していない 。 それどころか 、 イラン核合意J CPOA が、米大統領に よって葬り去られた結果、 中東では環境がさらに悪化しつつある。 国連が支援する 核兵器禁止条約( TPNW はゆっくりではあるが 前進して いる。しかし、すべての核保有国とその同盟国は参加の見通しがたっていない。
まとめれば、核の 脅威 は 依然存在し、 最近では 核 の脅威廃絶を支持する人びとの 活動 は、より困難になっている。 これまで以上に、私たちはヒバクシャ( 最初に用いられた 原爆の被害者 たち )の声を聴かねばならない。―「ナガサキを最後の被爆地に 」。
核兵器の所有および使用(偶発的使用を含め) に反対する 意識と行動 を 、すべての手段を尽くして 促進する 以外に 、私たちに残された道はない。
パオロ・コッタ・ラムジーノ
パグウォッシュ会議事務総長