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ガザ危機をめぐる声明―

―即時停戦、国際法遵守、一刻も早い救援を


 パレスチナ・ガザ地区をめぐる危機は発生から8ヶ月を経てさらに深刻化し、今や破局的様相を呈している。イスラエルによる全面侵攻、市民全体を標的とする無差別攻撃の結果、3万数千人以上(その7割は子どもや女性)が死亡した。住民の約9割が家を失い、強制的移動を強いられた。病院・学校等も攻撃の対象となり、食糧や水、医薬品の供給も遮断される中で、人びとの生活は破壊され、飢餓が広がっている。
 まぎれもない人道上の惨劇が生じており、これに対し国連は2023年12月には総会で、さらに2024年3月には安保理で、停戦を求める決議を採択するに至った。また国際司法裁判所(ICJ)ではガザの事態はジェノサイド条約違反だとする訴訟が進行中であり、ICJは2024年1月にはジェノサイド防止のためのすべての手段を講ずることを求める暫定措置、さらに5月にはガザ最南部ラファでの戦闘停止を求める暫定措置(命令)を発した。国連安保理決議や国際司法裁判所の命令は法的拘束力を持つものであり、ガザの惨劇を一刻も早く止めることは今や国際的コンセンサスであると共に国際法上の要請となっている。
 私たち日本パグウォッシュ会議に集う市民と科学者は、核兵器と戦争の廃絶をめざすラッセル=アインシュタイン宣言の精神に基づき、また、国際紛争の武力による解決を拒否し、戦争を放棄すると共に、すべての人の平和的生存権を謳う日本国憲法を持つ国民として、ガザ侵攻の即時停止、国際法・国際人道法の全面的かつ厳格な遵守を強く求める。
 ガザでの危機をめぐってはイスラエルの閣僚が核兵器使用の可能性を示唆し、米国政界でもイスラエルへの武器供与を推進する文脈でヒロシマ・ナガサキへの原爆投下を正当化する発言が繰り返されるなど、核による威嚇、核兵器の保有および使用を擁護する動きが目立つ。私たちは、かつてヒロシマ・ナガサキで核兵器による無差別殺戮、コミュニティー全体の抹殺を経験した国の市民として、いまガザの人びとが直面しつつあるジェノサイド(集団殺害)に慄然たる思いを抱き、人間性の観点から深い危機感を覚えると共に、今回の事態を機に核兵器正当化を図ろうとする動きに断固抗議する。
 現在進行中の悲劇を止め、人びとの苦しみに一刻も早く終止符を打つためには、即時停戦、人質の解放(2023年10月のハマースの攻撃で拉致された人質に加え、イスラエルに不当に拘束・留置されてきたパレスチナ側の拘禁者を含む)、ガザに対する封鎖解除と、人道支援物資の全面的かつ速やかな供給が必要である。さらに問題の根本的解決のためには、1967年以来続いているイスラエルによるガザおよびヨルダン川西岸地域に対する占領、入植地建設等の、国際法違反の事態を終わらせ、パレスチナ人の民族自決権の実現、パレスチナ独立国家の建設を国際社会の支援のもとに平和裡に進めて行くことが求められる。日本政府には、憲法が掲げる平和主義の原則に基づいて、紛争の平和的解決と国際法遵守を求める毅然たる外交を展開し、一日も早く侵攻を終わらせ、ガザの人びとの苦難を救うため全力を尽くすことを要望する。

2024年6月  日本パグウォッシュ会議運営委員会

日本パグウォッシュ会議  Pugwash Japan

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